更新日:2022年3月13日
予想していたがまさかと思われた、想定外のロシアのウクライナ侵攻が起こりました。 第7回JPCオンラインコンファレンスは、正にウクライナ侵攻の真っ最中でしたが、予定通り2月28日に開催させて頂きました。この様な状況下参加頂いた方々には厚く御礼申し上げます。 参加が叶わなかった方々は、是非、録画又はホームページの開催報告をご覧ください。 https://www.japanpensions.net/7th-video 当日の講演では、「ESGの源流にも遡りつつ、新しい、欧州の先進的ESG投資」をご紹介しました。講演は、ドイツのメッツラー・アセット・マネジメント株式会社(日本)に、新年特別企画第1弾に引き続きお願いしました。 メッツラーグループは、1674年創業の繊維貿易会社が起源で、1800年頃から銀行業に変身、更に1871年に資産運用業を開始し、日本法人は2001年に設立されました。現在のドイツのメッツラー・アセット・マネジメントGmbHは1995年に設立され、今でもプライベートバンクのメッツラー一族が唯一の株主との事です。又、ESG投資についても、ドイツの宗教投資家の資産運用受託をきっかけとして約20年以上の歴史を持っています。 同社は、買収等で規模の拡大を追わず、自律的成長で発展して来たとの事でしたが、今回の講演の中で、激動の欧州大陸の中で生き抜いてきた「知恵」を感じて頂けたでしょうか?私自身は、その知恵とは、「旧い物と新しい物の融合」ではないかと思いました。(今回紹介のあった戦略で言えば、譲れない倫理規範や価値観を維持しながら、最先端のテクノロジーを活用している。) 「投資を始めたいが、「所謂“ナンチャッテESG”を採用したくない」との声を、多くお聞きしています。同社が昨年より開始した「グローバル・エシカル・バリュー戦略(グローバル株式運用)」は、一般のESG投資より厳しい倫理規範で運用するESG投資という事です。そのような厳しい規範でリターンが下がらないか?検証する必要もありそうですが、年金基金にとってもその考え方は参考になるのではないでしょうか? 是非、今回の講演内容を検証し、ESG投資を開始するならばどのような戦略が納得できるか?皆様の年金基金内で議論頂ければと思います。市場動向は予測しがたく、年度末決算状況が心配と思いますが、ESGという長期的視点での資産運用についても一考頂ければ幸いです。

オミクロンでコロナ危機も継続していますが、皆様お変わりありませんか?本年もよろしくお願いします。今回は新年特別企画として、ESGの源流を辿るコンファレンスを開催しました。
先ず、国連共同職員年金基金CIO進藤氏から、「国連共同職員年金基金におけるサスティナブル投資の取組み」についてNYからライブでお話し頂きました。
国連では1999年から「責任あるビジネスプランをプロモートする」活動を開始し、それが金融・資産運用にも広がっていった、その一つの例が2006年に設定された国連の「責任投資原則」との事でした。現状ESG投資のメインは環境ですが、今後、S (社会・道徳)、G (ガバナンス)にも注力していくとの事です。
又、現国連事務総長が、「国連年金での脱炭素活動で、ポートフォリオの炭素排出量大幅削減」と新聞でもコメントしており、トップの関心も高いとの事、進藤氏も責任と遣り甲斐を感じられておられる様子でした。
「ESG投資を今から始める為のアドバイスは?」との質問にも、「環境対応は待ったなしでやるべき事、過去の市場リターンは順調だったが、将来の長期的市場リターンは環境破壊の影響もあり不透明、資産オーナーの役割としてその改善に資する運用は必然」とのお考えでした。又、「ESG投資は欧州が先行しているが、米国も急速に追いついている、程度の差はあるが、全くESGを考慮しない米国年金基金は無いのでは?」とのお話でした。
続いて社会的要求や歴史的背景から、ESG 投資をリードする勢いの欧州の ESG 投資について、ドイツのプライベートバンク、メッツラー社から、「欧州の資産運用における ESG」についてヴィースホイ弘貴氏より全体像、ダニエル・ザイラー氏からその詳細についてビデオで講演頂きました。
メッツラー社からのESG投資概略説明では、先ず、倫理的な理由等で問題ある企業への投資を避ける、次に銘柄選択にESG的要素を取り入れる、又、投資先企業へ投資家として影響力を発揮する(議決権行使、対話)という具合に進んでいったとの事ですが、これは国連年金とも共通するようです。具体的な銘柄選択やESG投資効果(特に欧州はESG効果が継続して大きい、米国でも近年急速に効果を発揮)の説明もあり、ESG投資についてイメージはつかめたのではと思います。
又、「規制強化で運用に弊害は無いか?」との質問に、「ESG的要素やESG規制を運用プロセスに取入れる事で、投資先との会話等から深く投資先を知る事が出来た。持続可能な投資とは、持続可能なビジネスモデルを見極める事と密接に関係している」との回答で、ESG考慮は長期的投資の基本的態度と納得しました。
いずれにしても、ESG投資、SDGs投資は、未だ歴史も浅く発展途上であり、規制・情報開示・運用手法等はこれからも日々発展改善されていくものだと思います。今回のコンファレンスが、ESG投資を年金運用に取り入れるべきか?日本の年金基金は米国・欧州に比べてESG投資にネガティブと感じられますが、皆様の議論の参考になればと思います。

更新日:2021年11月25日
コロナ危機の中でも、世界の投資市場では、ESG,SDGs投資の拡大が続いている。
このような状況下、今回のオンラインコンファレンスでは、「運用の新方策(ニューノーマル)を探る」の第3弾として、「企業年金のESG投資考察とクリーン・エネルギー・ファンドのご紹介」というテーマで開催した。
年金のような長期投資家にとって、長期目線での資産運用は必須であり、「社会的課題に立ち向かうESG・SDGs投資の隆盛はまだまだ止まらない。」との説明にも頷けた。
又、ESG投資で最も理解しやすい「E(環境)」にフォーカスした戦略として、CARVAL社の「クリーン・エネルギー(太陽光)・ファンド」を紹介した。本戦略は、太陽光発電会社等のキャッシュ・フローに着目したクレジット投資がメインとの説明であり、米国電力需要は今後も拡大が予想されるなかで、脱炭素への社会的要請は、クリーン・エネルギー(太陽光)発電を益々盛んにし、その資金需要は今後も旺盛との事であった。又、同社は、比較的小規模で利回りの高い発電所案件にも注力し、それを、要求利回りの低い大型インフラファンドに売却する等の入替えで収益底上げの努力している事例紹介もあり、米国投資会社のバイタリティも感じられた。
CARVAL社は、NYに拠点のある「Soleil Global Advisors社」から紹介を受けたが、海外投資案件、特に小粒でもピリッとした戦略や、日本では余り有名ではないが自国では運用力が高く、信頼できると評価されている運用会社の発掘には、言語と地理的壁を超えたネットワークが必要であり、同社のようなマーケティング会社の役割も重要であると改めて認識された。
日本では、「企業への貸出」に年金が投資する手段が余り存在しない中、脱炭素という社会課題解決にも寄与でき、資金需要も継続すると予測される米国での「太陽光発電へのクレジット投資」を年金資産の投資対象とする事は可能か?
是非議論して頂ければと思ます。
