JPCオンライン 第6回開催後記
by マーケットメーカーズ

メッツラー・アセット・マネジメント株式会社 / モニターキャピタル社
年金基金資産運用の新方策(ニューノーマル)を探る-Ⅴ
~欧米の先進ESG投資を学ぶ~
オミクロンでコロナ危機も継続していますが、皆様お変わりありませんか?本年もよろしくお願いします。今回は新年特別企画として、ESGの源流を辿るコンファレンスを開催しました。
先ず、国連共同職員年金基金CIO進藤氏から、「国連共同職員年金基金におけるサスティナブル投資の取組み」についてNYからライブでお話し頂きました。
国連では1999年から「責任あるビジネスプランをプロモートする」活動を開始し、それが金融・資産運用にも広がっていった、その一つの例が2006年に設定された国連の「責任投資原則」との事でした。現状ESG投資のメインは環境ですが、今後、S (社会・道徳)、G (ガバナンス)にも注力していくとの事です。
又、現国連事務総長が、「国連年金での脱炭素活動で、ポートフォリオの炭素排出量大幅削減」と新聞でもコメントしており、トップの関心も高いとの事、進藤氏も責任と遣り甲斐を感じられておられる様子でした。
「ESG投資を今から始める為のアドバイスは?」との質問にも、「環境対応は待ったなしでやるべき事、過去の市場リターンは順調だったが、将来の長期的市場リターンは環境破壊の影響もあり不透明、資産オーナーの役割としてその改善に資する運用は必然」とのお考えでした。又、「ESG投資は欧州が先行しているが、米国も急速に追いついている、程度の差はあるが、全くESGを考慮しない米国年金基金は無いのでは?」とのお話でした。
続いて社会的要求や歴史的背景から、ESG 投資をリードする勢いの欧州の ESG 投資について、ドイツのプライベートバンク、メッツラー社から、「欧州の資産運用における ESG」についてヴィースホイ弘貴氏より全体像、ダニエル・ザイラー氏からその詳細についてビデオで講演頂きました。
メッツラー社からのESG投資概略説明では、先ず、倫理的な理由等で問題ある企業への投資を避ける、次に銘柄選択にESG的要素を取り入れる、又、投資先企業へ投資家として影響力を発揮する(議決権行使、対話)という具合に進んでいったとの事ですが、これは国連年金とも共通するようです。具体的な銘柄選択やESG投資効果(特に欧州はESG効果が継続して大きい、米国でも近年急速に効果を発揮)の説明もあり、ESG投資についてイメージはつかめたのではと思います。
又、「規制強化で運用に弊害は無いか?」との質問に、「ESG的要素やESG規制を運用プロセスに取入れる事で、投資先との会話等から深く投資先を知る事が出来た。持続可能な投資とは、持続可能なビジネスモデルを見極める事と密接に関係している」との回答で、ESG考慮は長期的投資の基本的態度と納得しました。
いずれにしても、ESG投資、SDGs投資は、未だ歴史も浅く発展途上であり、規制・情報開示・運用手法等はこれからも日々発展改善されていくものだと思います。今回のコンファレンスが、ESG投資を年金運用に取り入れるべきか?日本の年金基金は米国・欧州に比べてESG投資にネガティブと感じられますが、皆様の議論の参考になればと思います。