JPCオンライン 第6回開催報告
 

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「国連共同職員年金基金における
サスティナブル投資の取り組みについて」
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国連共同職員年金基金
チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)  
進藤 達 氏

(以下、進藤氏の講演録画より主催者で要約しました)

  • 国連共同職員年金基金の制度内容等について

    • 長期の実質リターン目標は、米国消費者物価上昇率+3.5%
       (ドルベース、名目値では現時点9~10%)

    • 制度は確定給付年金(DB)、国連及び関連機関が加入、加入者・受給者211千人

    • 資産残高は10兆円、グローバルに100以上の国に分散投資を実施、インハウス運用が主 (グローバルな人材、資産の82%は、銘柄選択まで年金基金で実行)

    • 昨年(21/6)の投資結果は、好調な株式市場に支えられ良好、長期でも目標を達成している

    • 資産配分はグローバル株式:57.6%、グローバル債券:26.2%、不動産:6.9%、PE:6.5%、インフラ:0.2%、他現金 
      (米国の一般的年金と同様株式ウエイトは高い)
      ・・・・・・・・・・・・・・詳細は省略・・・・・・・・・・・・・・・・・

       

  • 現在のサスティナブル投資の取組みについて

    • 国連としての立場、ESG投資の歴史

      • 国連が、ESG,サスティナブル経済活動の旗振り役になっている

        • 1999年に「国連が責任あるビジネス規範をプロモートする」との声明を出し、2000年にグローバルコンパクトを発表した。

        • その一環で2004年に金融にスポットを当てたレポートを公表し、それが2006年の「PRI(責任投資原則)に結び付いた。

      • そのような背景もあり自社年金でも、ESG投資を唱え実施してきた。(ESGが最も重要な投資指針となっており、受託者責任の中に含んでいる、具体的には「温室効果ガスの排出ネットゼロ」を目指す活動にも最初から参画している。)

    • ESG投資の戦略(フレームワーク)

      • 先ず、ESGとしてふさわしくない投資先を投資ユニバースから除外している(タバコ、兵器、*石炭セクター等を投資対象から除外、*石炭産業の除外は昨年実施)

      • 次に、ESG的要素を投資先選定に組込んでいる。(株式・債券の公開市場、プライベート市場とも)

      • 投資後には、投資先企業への議決権行使や経営者との対話で、ESG理念に合致した企業活動を要請している

    • 具体的ESG投資の実例

      • ポートフォリオからの「温暖化ガス排出を削減する」活動を積極推進

        • ネット・ゼロ・アセットオーナーアライアンスに参加し、2050年までにネットゼロを誓約(アライアンス参加団体は67、資産残高は10兆円を超える)

        • アライアンスの目標より積極的に目標設定(2024年に△29%が上限基準だが、△40%を誓約)

        • 2021/10月で、保有ポートフォリオからの排出量を32%、12月では39%削減

        • 現グテレス国連事務総長がCOP26を前に、日経新聞に寄稿した文章の中でも、国連年金の脱炭素活動に触れている。(気候変動に対し、トップが強い関心を持っており、対外的文書で自社年金にも触れているのは極めて異例な事)

      • 投資後の活動内容(2020年実績)

        • ほぼ投資先企業の100%に議決権を行使した。

        • 500社以上の経営者と対話した(国連の名前は出さないが、株主団体としてエンゲージメント)。

          • 前年第2四半期の対話項目は環境が26.3%、社会道徳が17.6%、ガバナンスが44.3%(366社と1072回)

  • 質疑

    • 質問1

      • 日本の企業年金では、SDGs、ESG投資にやや乗り遅れてしまった気がします。しかし今から投資を始めると、ブームの頂点で、雨後の筍のように乱立したESGもどきのファンドを購入してしまう恐れを感じています。例えば、時価総額で比較するとテスラはトヨタの3倍というのは、いくらESGを考慮し将来期待を反映したとしても高すぎると感じます。そのような観点で、今からスタートする上で注意すべきと思われる点を教えて下さい。

    • 回答1

      • 国連では、ESGのE(環境)が最重要課題でEに特化して取り組んできた。S・Gはこれからの課題と認識している。しかし、気温上昇で人間が住めない地球環境になる恐れがあり、Eについては待ったなしと思っている。しかし、タイミングは難しい、各年金の各々が事情に応じて決定すべきだがなるべく早く実施すべきだ。(時間分散でも良いし、トップダウンでエイやと決めるのでも良いが)

      • 又、テスラの話があったが、国連では余り銘柄選択に期待しておらず、市場(社会)全体を良くする方向で、アセットオーナーとして企業に働きかける事が大事と考えている。(ESG投資はESGスコアの高い企業をオーバーウエイト、低い企業をアンダーウエイトしてしまうが)

    • 質問2

      • 先ほどのお話では、国連年金では受託者責任とESG考慮は同列との事でした。又、最近の日経に、「米国のエリサ法で、投資収益を最重視する規制を変更し、ESGを考慮して投資先を選択可能にするとの記事がありました。米国の一般的企業年金におけるESG投資の浸透状況、ESG投資へのスタンスの現状を教えて下さい。進藤様が感じられている雰囲気で結構です。

    • 回答2

      • 企業年金と交流が多いわけではなく詳しくは知らないが、ESGでは欧州が先行しているのは事実、しかし最近米国のキャッチアップもかなりのスピードで進んでいる。例えば世界最大のブラックロックもESGに積極的であり、その結果、米国年金でもESGは進んできていると思う、従って、米国年金でESGを考慮しない年金は無いのでは?しかし、形だけのところもあり、先進的な例もあるが、全体にESGを浸透させることが課題と思っている。

    • 質問3

      • 最後にこれだけは言いたい事は?

    • 回答3

      • これまでは市場リターンも良かったので、年金基金の収益も好調だった。しかし、世界的には気候温暖化が進み、地球が飽和状態となり、人口増加も止まり、それが経済の足かせとなり、市場リターンが低下する可能性もあると思っている。そうなれば、年金基金の目的である給付できなくなるリスクがある。その為にも、アセットオーナーとして、今までは必要と感じられていない市場リターン(β)の低下を少しでも食い止める行動は待ったなし、ちょっとした努力がリターンを上昇させる。

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メッツラー・アセット・マネジメント株式会社
代表取締役社長 ヴィースホイ弘貴氏


Metzler Asset Management GmbH
サステイナブル・インベストメント・オフィス(SIO)統括
ダニエル・ザイラー 氏

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「欧州の資産運用におけるESG」
-倫理・価値そして規制
「欧州の資産運用におけるESG」
-倫理・価値そして規制
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メッツラーグループは創業より348年以上の歴史を有し、欧州の企業や投資家との関係を大切にしてきた。その中で培われた欧州での倫理観、価値観から生まれた投資制限を源流にしつつも、アルファを生み出す株式・債券のアクティブ運用をメッツラー・アセット・マネジメントGmbH(以降、メッツラー)は続けてきている。現在の形のESG運用と呼ばれる運用戦略を世に出したのは20年以上前である。2016年には、ドイツの資産運用会社として初めて、すべてのアクティブ戦略にESGを体系的に統合。2022年にはESGへの先進的な取り組みが評価され、ドイツの格付機関でファンドリサーチ会社でもあるScope社から、最優秀運用会社ESGエクイティ賞を受賞した。

 

今回、メッツラーは以下の三つのトピックについて講演を行った。

  • ESG規制が与えている欧州の資産運用業界への影響について

  • 倫理や価値観などのESG要素が、セクターや地域ごとの運用成績にどのように影響しているか

  • メッツラーが投資プロセス全体でどのようにESGを統合しているか

 

一つ目のトピックの欧州の規制であるが、欧州では規制が資産運用業界に影響を与えており、企業や投資家に影響を与える関連の規制の数が、過去25年間で大幅に増加している。特にここ5年間では、アメリカとアジア太平洋地域においても多くの新しい規制が施行されたことは注目に値する。欧州で実施された重要な規制の中では、EU分類法(タクソノミー)、開示規則(SFDR)、UCITS等のフレームワークの調整、の特に3点が我々運用会社が投資戦略を作り、そしてそれを投資家に説明するというプロセスに最も強い影響を与えたと考えている。

 

二つ目のトピックでは、ESG要素が、セクターや地域ごとの運用成績にどのように影響しているかを、MSCIのESGのリサーチのデータを使用し説明した。問題あるビジネスを持つと考えられる欧州企業のみに投資した場合、同様の米国企業のみに投資した場合と比較して、市場ベータに劣後したパフォーマンスが見られたものの、欧州株式市場では、市場ベータ比で約9%のパフォーマンスの低下が見られた。これは、児童労働や汚職のような非常に深刻なビジネス上の不祥事が発生した場合に、欧州の株式の方がより大きなマイナスリターンになりやすいことを示していると思われる。言い換えれば、特に欧州株式においては、2016年からメッツラーが基本的なサステナビリティ・フレームワークの一環としてESG要素を導入し、問題があると考えられる企業を除外することは、パフォーマンス上でも理にかなっていると考えられる。

また、不祥事となりえる事業、例えば石油・ガス、武器、タバコ等除外した場合、リターンに一定のプラスの影響がデータでは見られた。

 

三つ目の、メッツラーが投資プロセス全体でどのようにESGを統合しているかであるが、まず、メッツラーは世界で認知されている広範な原則・基準を基に排除基準を設け、問題があると思われる企業を除外している。また、社内で一般ツール化されている自社開発のダッシュボードを使用して、ボトムアップ分析から上がってくる重要な項目についてESG要素からもビジネスモデルの評価を行い、ESGインテグレーションを行っている。エンゲージメントでは、ESGに関するテーマについて520以上の企業と計1,666件に上る積極的な対話を行っている。これらが、全ての戦略に適用される基本的なサステナビリティ・フレームワークであることを強調したい。このフレームワーク外の要望が投資家からあった場合は、それが価値観に基づくものでも、気候や二酸化炭素に関するものでも、インパクト投資に関するものでも、その要望に合わせて確立した戦略をカスタマイズすることができる。

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今後、サステイナビリティを基準とした投資は、投資のスタンダードとして定着する可能性が高く、規制は投資資金の流れをESGの観点に基づいた方向に向かわせることになり、よって、投資先企業においても資金を調達するための費用に影響を与えることとなる、とメッツラーは考えている。こうした背景により、企業分析の中に必然的にESG項目が入ってきて相対評価を生み出すため、アクティブ運用はESGインテグレーションを行うのに最も適した運用であると言える。メッツラーにとって持続可能な投資は、企業分析の中で持続可能なビジネスモデルを発掘することに他ならない。

 

なお、講演後に、以下の質問と回答が行われた。

質問1
メッツラー社では全ての投資にESGを考慮との事でした。株式は将来の企業価値を織り込むことでESG考慮も理解できますが、債券投資はあくまでインカム収益と元本確保が目的で、ESGを考慮すると資本コストが低くなるとの事なら、債券投資のリターンは単純に下がってしまう気がします。それでも債券にESGを考慮して運用を行うのですか?

(回答)
確かに資本コストが低くなるということは、そういった企業が債券で資金調達するときに低いクーポンで調達できるようになるということなので、新発債に投資する時には以前の債券より利回りが下がったという印象を受けると思います。
ただし、それは債券の持ちきり運用をした場合に強く感じることで、一般的なベンチマーク対抗の運用では、資本コストが低くなっていく企業はクレジットスプレッドが縮小していくので、債券価格は上昇することになります。そういった債券銘柄をアクティブ運用でオーバーウェイトすることでより高いリターンを上げられることになると考えています。また、高いESGスコアを与えられる企業は経営リスクが低いから高いESGスコアを与えられるわけなので、不祥事によるヘッドラインリスクやデフォルトリスク自体も低下しますので、債券価格も安定する傾向があります。リターンだけでなくリスクにも良い影響があるということです。リスク・リターン・プロファイルを改善させる目的で、メッツラーではESGスコアが高い企業に注目していますが、それだけでなく、ESGスコアが改善傾向にある企業や、今はスコアが低いけれど企業との対話を通じて今後改善してきそうな企業にも注目しています。

質問2
規制の強化は、事業会社のESGに関する開示以外に、資産運用者の投資先選択基準等の開示レベルを上げるような要請も多いのではと思う。ファンド運用者としては運用手法を開示してしまうことになり、他の運用者との差別化が困難になるので、開示はできるだけ避けたいと考えているのではないだろうか。規制による開示強化とファンド運用の手法の秘匿は両立するのか?規制強化がESG投資拡大の障壁にならないか?

(回答)
規制が強化されてきて、それを順守するために運用会社としてより多くの作業が求められるようになってきたのは頭の痛い問題ではあります。ただし、規制の多くは当局に対し開示が求められることが多いということと、アルファを生み出す運用手法自体を開示するよう求める規制はありませんので、その点は心配ありません。逆に運用者のアルファ創造の面で規制が良い作用をしている点もあります。ダニエルもビデオの中でコメントしていましたが、運用者としてESG規制の要件を満たすため、情報収集のため、より多くの対話を企業と持つことになり、集める情報もより突っ込んだ内容になるため、ボトムアップの分析の精度が上がったと聞いています。例えば二酸化炭素排出が多いセクターの企業を見る際にも、今後規制対応するためにかかってくるコストを利ザヤの中で十分吸収できるか、あるいは、そういった対応をすでにしている企業なのかなど、より多くの分析ポイントを提供してくれているという面もあります。

 

 

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